新刊共著『サブカルチャー戦争』ほか最近の(半)仕事たち


渡邉です。
ブログでは、また一ヶ月ぶりの更新になってしまいました。もう師走の声が聞こえてきますね。早いものです。
前回のエントリにも書いた通り、最近は学位申請論文のほうも一段落したわけですが、まるで研究が落ち着いたのを待っていたかのように(?)、評論の仕事が怒涛のように押し寄せてきていて、相変わらずてんやわんやの状態です。まぁ、評論の原稿仕事の他にも、これから年末にかけては、論文の最終審査報告もあるし、諸々来年度に向けた準備もある。毎年恒例の某新人文学賞の1次選考を粛々と消化していたり、おとといには、これまた某文学賞の予選委員のお話も戴いたり……と、表に出るお仕事以外にもいろいろタスクが重なっていて、頭の切り替えが難しい。…とはいえ、まぁ、充実しています(笑)。依頼を戴けるのは有難いことですし、こちらとしては、本当に粛々と読み(観て)、粛々と書くしかない。ほとんど、それしかできないのだから。
ただ、年内一度くらいは北鎌倉にでも行って、ゆっくり冬の景色を楽しみたいものです。
あ。そういえば、つい先日に、ようやく連載「イメージの進行形」の第2回を脱稿しました。実に連載開始から5ヶ月近くも間が空いてしまい、もう誰も読まないんじゃないかと思う今日この頃なのですが(笑)、何とか年内には再開できそうな気配がします。お待たせしたぶんだけ、今後はよりいっそう面白い原稿を書こうと思っているのですが、ともあれ、ご期待いただければうれしく思います。

さて、そんなふうに再開した仕事がぽつぽつとながら、ようやく世に出てきました。
まずは、何と言っても、来月2日に僕の4冊目の新刊共著が発売になります。
僕も所属している若手の批評サークル「限界小説研究会」(限界研)の、『探偵小説のクリティカル・ターン』(08年)、『社会は存在しない セカイ系文化論』(09年)に続く、3冊目の批評論集(文化論集)です。僕はその中で、60枚ほどの阿部和重論を寄稿しています。

・論考「コミュニケーション社会における戦争=文学――阿部和重試論」(限界小説研究会編『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』、南雲堂)

サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ

サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ

さらに、限界研の公式ブログに、この『サブカルチャー戦争』の内容と絡めた15枚ほどのエッセイを書きました。

・エッセイ「ミステリ・映画・戦争――『サブカルチャー戦争』の余白に」(限界研公式ブログ)⇒限界小説研究会BLOG

また、(もう終わってしまったのですが)、去る11月23日(19時〜)に『サブカルチャー戦争』の販促を兼ねたUstream中継に出演しました。
実は(?)僕にとっては、初めてのUst出演だったのですが、当日は、もう数年来の付き合いのある笠井翔さん*1主宰の美少女ゲームブランド<スプートニク>の新作『風ヶ原学園スパイ部っ!』(なんと共同脚本にはあの伝説的ライター・佐藤心さんが参加しています)の発売記念も兼ねて合同で販促しようという企画でした。
当日は、僕と翔くんと限界研の藤田直哉さん、そして、藤田さんと同じ「東浩紀ゼロアカ道場」出身者として著名な、文芸批評家の坂上秋成さんと峰尾俊彦さんもゲスト参加してくださり、かなりハードコアなエロゲー談義が展開されました(笑)。

サブカルチャー戦争』、あるいは僕の論文に関しては、(ツイッターのほうでもつぶやいたように)、これから年末年始にかけていくつかの関連イベントや関連フェアが都内各書店にて開催予定ですので、おいおいここでも書いていきます!
とりあえず一言言っておくと、僕の今回の論文は、かなり久しぶりのガチの「文芸評論」になっています。とりわけ「純文学」に区分される現代作家の長文評論ということでは、おそらく08年秋の『ユリイカ』に寄稿した中上健次論以来、2年ぶりくらいの仕事ではないでしょうか。惜しむらくは、この原稿を書いていたのが(8月)、ちょうど博士論文執筆の追い込みの真っ最中で、自分としてはマックス状態の3分の1ほどの力しか投入できなかったこと。僕としては10代から敬愛する阿部さんについての初めての作家論なのにも関わらず、それだけが残念です。
とはいえ、最近の僕は映画の分野でこそ仕事をしていますが、そもそも本来は『群像』の赤坂真理論で商業誌デビューし、これまで埴谷雄高や先の中上健次笠井潔森博嗣辻村深月……などを正面から論じてきた「文芸批評家」だという自覚は、いまも継続しています。実際、僕の論文をお読みになれば分かる通り、とりわけ小説の「現在」に対する関心はいまも失っていない。確かに、今年は学位申請論文の準備や執筆、学会発表など研究に追われたため、新刊小説を読む時間はほとんど取れませんでしたが、一段落ついたいま、また小説読みとしても復帰しようと思っているところです。そして、それは何度もいうように、いま「映像圏」というキーワードをめぐって展開中の、僕の映画論や映画批評の仕事とも密接にリンクしています。
ぜひ本論集の他の執筆者の論考とともに、「文芸批評家」復帰(?)した僕にも、忌憚のないご意見・ご批判を寄せてくだされば有り難く思います。
今年も残り少ないですが、年末までなんとか飛ばしたいと思っています。ではまた、近いうちに。

*1:お名前から分かるひとは分かっちゃいますので、いいますが、笠井潔さんのご長男です。