第12回本格ミステリ大賞選評@『ジャーロ』&村山知義年表@『村山知義 劇的尖端』(森話社)


渡邉大輔です。
小さなお仕事を二つほど書いておきます。

一つは、いま発売中の『ジャーロ』(光文社)に、第12回本格ミステリ大賞の選評文を寄せています。
・「第12回「本格ミステリ大賞」選評」(『ジャーロ』no.45、光文社)

ジャーロ No.45 (光文社ブックス 101)

ジャーロ No.45 (光文社ブックス 101)

今年は、小説部門は、城平京氏の『虚構推理 鋼人七瀬』、評論・研究部門は、笠井潔氏の『探偵小説と叙述トリック』を推しましたが、おかげさまで二作とも受賞しました。おめでとうございます。

もう一つですが、森話社から出た、岩本憲児編『村山知義 劇的尖端』という学術系の論文集の巻末に掲載された、20ページほどの「村山知義年表」を作成しました。
・資料「村山知義年表」(岩本憲児編『村山知義 劇的尖端』、森話社

以下に目次も挙げておきます。

奔流する創造のエネルギー
大正後期、熱気と頽廃の前衛ベルリンから帰国後、美術・デザイン・演劇・映画・文学など多彩な領域でアヴァンギャルド芸術家としての活動を開始した村山知義。エネルギッシュで広範な活動のなかから、本書では主に演劇・映画にかかわる軌跡を中心にたどる。

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《序》
八面六臂の芸術家――またの名、小説家・村山知義=岩本憲児

《?》ドイツからの啓示を受けて
ベルリーン、一九二二年――遊学中の観劇体験にみる、原風景としての混沌=萩原 健
魂の抱擁――『芸術家の生活』(一九二三年)に見る村山知義の演劇観=正木喜勝
アヴァンギャルドの「生活」と「作品」――村山知義一九二二― 一九二七=滝沢恭司
村山知義と近代舞踊――二人の舞踊家との出会いを中心に=國吉和子

《?》左翼の旗の下に
村山知義の演劇的足跡=井上理恵
一九二〇年代の村山知義――前衛/革命の演劇=西堂行人
プロレタリア映画運動――批評と実践=岩本憲児
創造から共有へ――村山知義とプロレタリア・レヴュー=中野正昭
村山知義における演劇と映像の融合=李正旭

《?》身体・映像・言語
モンタージュ理論と演技術――村山知義の「新しい演技」=笹山敬輔
リアリズムのトーキーへ!!――村山知義の『新選組』をめぐって=志村三代子
『忍びの者』の周辺――戦後の村山知義と一九二〇─ 一九三〇年代の語り直し=川崎賢子

《詩・エッセイ》
汽船の詩=村山知義
私を罵つた夫に与ふる詩=村山籌子
村山知義論=佐々元十
トムの弁証法佐々木孝丸

関連年表=渡邊大輔

今回の仕事は、編者である岩本憲児先生のお声掛けでやらせていただいたものですが、当然のように、僕は村山知義や演劇・美術関係は専門外なので、年表作成とはいえ、年末年始は本当に大変でした…。
村山知義は、みなさんご存じのように、大正から昭和にかけて活躍した演劇人で、前衛的かつ左翼的な芸術家。今年は、全国各地で、「すべての僕が沸騰する 村山知義の宇宙」という大回顧展も巡回しています。⇒404 Page Not Found | 神奈川県立近代美術館
僕は、ロシア構成主義やいわゆる<マヴォ>の同人、くらいの知識しかなかったのですが、いざ調べてみると、これが本当に大変。とにかく、村山は若い頃から晩年まで、あらゆる分野で精力的な活躍を続けた全方位的な芸術家であり、美術・挿絵・舞台装置デザイン・装丁・舞踏・戯曲・舞台演出・小説・評論・翻訳・絵本・映画脚本・映画監督・建築……と、とにかく超絶多彩な領域で仕事を残している。しかも、関わった潮流も、構成主義や抽象芸術あり、左翼演劇あり、新劇運動あり、大衆小説ありと、アヴァンギャルドからキッチュまで目まぐるしい。20世紀芸術史をまるで一身に体現しているかのような人物なので、とにかくいろいろ突っ込まれるわ、なにやら大変でした。
まぁ、年表作ってみて、いかに村山がすごい人物かがわかりましたね。7月から9月まで世田谷美術館で展覧会から始まるので、ぜひ行かれたほうが面白いと思います。