よいお年を


渡邉大輔です。
今日は大晦日で、今年も残りあと数時間となりました。激動の2011年も多くの方々に大変お世話になりました。感謝申し上げます。
今年は世間的にも、東日本大震災福島原発事故問題、台風災害をはじめ、ウサマ・ビン・ラディンカダフィ大佐金正日といった各国の要人、あるいはスティーブ・ジョブズ小松左京立川談志ら各界のカリスマ的人物が相次いでこの世を去るなど、どこか時代の潮目の到来を強烈に感じさせる年でした。
個人的にも、今年は大学院を無事に修了し、大学で教え始めるなど、いろいろな意味で転機となった年でした。思えば、ちょうど一年前の年越しは、『ユリイカ』のソーシャル・ネットワーク特集の原稿を書いていましたが、今年もいろいろとお仕事をさせていただきました。
研究者としては、今年は、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館のグローバルCOE特別研究生、及び同館招聘研究員という身分で、さらに、2009年から参加している演劇映像学連携研究拠点のテーマ研究活動も継続していました。もはや恒例となった5月の日本映像学会の全国大会で口頭発表を行なったほか、日大の『芸術・メディア・コミュニケーション』と早大の『映画学』という紀要や学術誌に論文を発表しました。それに、10月には「日本映画史叢書」の最終巻として、岩本憲児先生が編まれた論集『日本映画の誕生』(森話社)に明治期の相撲活動写真に関する論文を発表しました。今年は、研究範囲を、戦前(明治・大正期・昭和初期)から戦中期にまで広げ、映画国策や映画ジャーナリズム、映画言説の「国際性」の問題などについて本格的に研究できたことがよかったです。その成果も、いくつかの論文や研究ノートとして下半期にまとめたので、これから春先にかけて続々とテキスト化されることでしょう。ちなみに、来年は、研究範囲としては、1945〜1970年くらいまでの日本映画の問題を扱う予定。
批評家としては、今年もいろいろやらせていただきました。書籍としては、藤田直哉さんも寄稿したムック本『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)と、佐々木友輔さんが編まれた『floating view』(トポフィル)。…で、思い出したけど、今年は、トーキョーワンダーサイト本郷で開催された美術展にもアーティスト(!)として参加して、テキストインスタレーション作品も出品したのでした。これの縁で、現代アート系の友人もたくさんできました。この展覧会の会期中に震災が起こったわけですが、それも含めて忘れられないイベントになりました。
そして、大きな仕事というと、なんといっても、文芸誌「早稲田文学」のウェブサイト(Wasebun on Web)で昨年の夏から1年半にわたってやらせていただいていた連載評論「イメージの進行形――映像環境はどこに向かうか」が、ようやく最終回を迎えたこと(正確には、まだ完結していませんが)。08年から始めた僕の映画批評(映像文化論)の集大成的な内容であり、連載分だけでおよそ400枚前後は書いたのではないでしょうか。来年はこれを踏まえていろいろとさらに広がりのある仕事ができればと思っています。『ユリイカ』や『ジャーロ』などの雑誌にもコンスタントに書かせていただいたし、ビジスタニュースや『図書新聞』など新しい媒体とのお仕事もありました。
そのほか、2月には、本格ミステリ大賞の候補作予選委員のお仕事もやりましたし、7月には『監督失格』の公式サイトにコメントも寄せましたし、10月には市川尚吾氏とミステリ評論をめぐる論争にもなったし、11月には6年ぶりに文学フリマにも参加したし、年末には日芸入江悠監督特別講義の司会もありました。1月の池袋コミュニティカレッジでの映画シンポ、3月のfloating viewシンポ、11月の映画祭TAMA CINEMA FORUMでのトークセッションと、今年は喋り仕事もそれなりにありましたね。入江悠監督や瀬田なつき監督などとお仕事でお話もできたし、フレデリック・ワイズマン監督にはサインまでいただいてしまいました。
美術館は、岡本太郎美術館森美術館、近代美術館、根津美術館に行ったくらいで今年はあまり行けませんでしたが、ギャラリーには結構行けたかな。来年は、また舞台やコンサートにも頻繁に行きたいものです。
というわけで、みなさんよいお年を。来年もよろしくお願いします!