新刊共著/萩野亮+編集部編『ソーシャル・ドキュメンタリー』(フィルムアート社)発売


渡邉大輔です。
昨日は限界研の新刊共著(ミステリ論集)の告知をしたのですが、明日(27日)、フィルムアート社からまた萩野亮+編集部編『ソーシャル・ドキュメンタリー 現代日本を記録する映像たち』が発売になります。僕は、短めの現代セルフドキュメンタリー論と、作品紹介、巻末の作家解説を執筆させていただきました。
・論考「記憶(わたし)を撹乱する試み――「パーソーシャル・ドキュメンタリー」の可能性」(萩野亮+編集部編『ソーシャル・ドキュメンタリー』、フィルムアート社)

ソーシャル・ドキュメンタリー ──現代日本を記録する映像たち (CineSophia)

ソーシャル・ドキュメンタリー ──現代日本を記録する映像たち (CineSophia)

フィルムアート社さんが昨年から刊行している、「CineSophia」という叢書の新刊です。
以下が目次。なんとも豪華です!

はじめに

0 〈社会派〉から〈ソーシャル・ドキュメンタリー〉へ
【序論】 社会的リアリティの変容ーードキュメンタリーの「主体」をめぐって 萩野亮


1 メディア・アクティビズムにいま何ができるか?
【対談】 ソーシャルメディア時代のアクティビズム 鎌仲ひとみ×津田大介 
【論考】 リアリティの描き方ーー技術的・物理的発展が不可能にしたもの 開沼博
     集合知の時代ーーソーシャル・ネットワークにおける映像の在り方 藤井光 

作品紹介 『フェンス 第一部 失楽園/第二部 断絶された地層』(藤原敏史
     『犬と猫と人間と』(飯田基晴)
     『Beautiful Islands ビューティフル アイランズ』(海南友子
     『祝の島』(纐纈あや)
     『ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ)
     *その他の作品

[コラム1]フィルムからネット動画へーー技術革新がもたらしたもの 安岡卓治


2 〈私〉を撮ることは何を意味するのか?
【作家インタビュー】 〈私〉を通して、失われゆくものを記録する 松江哲明 
【論考】 自己と(複数の)他者 萩野亮
     記憶を撹乱する試みー「パーソーシャル・ドキュメンタリー」の可能性 渡邊大輔

作品紹介 『アヒルの子』(小野さやか
     『セックスと嘘とビデオテープとウソ』(松江哲明
     『LINE』(小谷忠典)
     『311』(森達也綿井健陽・松林要樹・安岡卓治)
     『監督失格』(平野勝之
     * その他の作品

[コラム2]ドキュメンタリーの「商業性」を問い直す 大澤一生


3 〈郊外〉はどのような場所として描けるか?
【作家インタビュー】 可能性としての〈郊外〉 佐々木友輔
【論考】 郊外という絶望の場所を描く 藤村龍至

作品紹介 『ここにいることの記憶』(川部良太)
     『ナオキ』(ショーン・マカリスター)
     『FURUSATO2009』(空族)
     『新景カサネガフチ』(佐々木友輔)
     『モバイルハウスのつくりかた』(本田孝義)
     * その他の作品

[コラム3]〈被写体〉の視線から 佐藤直樹


4 個のカメラに国家は映し出せるか?
【作家インタビュー】 国家に抗して家族の物語をつむぐ ヤン・ヨンヒ
【論考】 ドキュメンタリーという精神ーー《国家》を視るための石つぶてとして 佐藤信

作品紹介 『9.11‐8.15 日本心中』(大浦信行)
     『ディア・ピョンヤン』(ヤン・ヨンヒ
     『選挙』(想田和弘
     『花と兵隊』(松林要樹)
     『ベオグラード1999』(金子遊)
     *その他の作品

5 社会制度と個人はどこで折り合えるか?
【作家インタビュー】 制度にかまわない、それぞれの生き方を見つめる 大宮浩一
【論考】 『精神』――社会学をやっていることになっている者から 立岩真也 
     「地上」から遠く離れて 萩野亮
作品紹介 『遭難フリーター』(岩淵弘樹
     『精神』(想田和弘
     『玄牝』(河瀬直美
     『ただいま それぞれの居場所』(大宮浩一)
     『平成ジレンマ』(齋藤潤一)
     *その他の作品

【特別ツイッター対談】
〈個〉の/による記録ーー〈観察映画〉と〈詩の礫〉 想田和弘×和合亮一

■巻末資料 〈ソーシャル・ドキュメンタリー〉をめぐる40人
大宮浩一 鎌仲ひとみ 河瀬直美 想田和弘 松江哲明 森達也 
安岡卓治 ヤン・ヨンヒ梁英姫) 池谷薫 大浦信行 海南友子 
佐々木友輔 しまだゆきやす 砂田麻美 土屋豊 土井敏邦 平野勝之 
藤原敏史 松林要樹 三宅流  飯田基晴 大澤一生 岩淵弘樹 
岡本和樹 小野さやか 川部良太 金子遊 小谷忠典 齊藤潤一 
刀川和也 柴田昌平 中村高寛 野本大 藤井光 藤本幸久 本田孝義 
纐纈あや 真利子哲也 村上賢司 綿井健陽 

■〈ソーシャル〉と〈ドキュメンタリー〉についてのブックガイド

本書は、2000年代以降の日本のドキュメンタリーの特質を、同時期に社会的に台頭してきた数々のソーシャルメディアがもたらした文化的・社会的変容に注目して、アーキテクチャと「個」=「私」が緊密に結びついた新たなドキュメンタリー――「ソーシャル・ドキュメンタリー」として定式化しようという試みです。同様のタームが、アメリカの現代写真史で用いられますが、それとは異なります。
いま映画批評で話題を集めている、ドキュメンタリーカルチャーマガジン『neoneo』のリニューアルした編集主幹としても活躍されている萩野亮さんの編になる、ということをはじめ、おそらく「ソーシャル」という名が冠され、それをコンセプトにした日本で最初の映画の書物ではないかと思います。しかも、それが単なるファッションではないばかりか、また単なる「現代ドキュメンタリー」の紹介本にも収まらない、今日の映像文化のハードコアを知るにふさわしい濃密な内容になっているところが画期というか白眉な点であると思います。
萩野さんも、序論で僕の「映像圏」について触れてくださっていますが、今秋に人文書院から刊行予定の『イメージの進行形』とも深く呼応する内容になっています。こういう論集が、いまこの時期に日本で出たということは、本当に意義深い。萩野さんとはぜひまた一緒にお仕事したいなと思っています。

さらに、本書では、昨年春に美術展を企画し、そこでご一緒させていただいた佐々木友輔監督、また同じくご一緒した川部良太監督もフィーチャーしています。さらに、巻末のブックガイドにもフローティング・ビューのカタログを紹介していただいています。ぜひこちらも一緒にご覧ください。

floating view 郊外からうまれるアート

floating view 郊外からうまれるアート

萩野さん、佐々木さんとは刊行後、一緒に何かイベントもやらせて戴くことで現在、企画が進行中です。
本書のような新しい映画批評の試みを、今年後半以降、さらに大きな流れにしていきたいと思っています。
こちらもぜひぜひお楽しみに!