トークイベント「映像の身体、郊外の映画」出演@UPLINK FACTORY


渡邉です。

群像新人文学賞授賞式に顔を出したりなどしておりました*1

最近は学会研究発表の準備や投稿論文の校正などで忙しく、新作映画はめっきり観れていません…*2
そんな中で、スコセッシの『シャッター・アイランド』や『第9地区』(『アバター』かい!)なども観ましたが、感想は機会があれば。
そうそう、石井裕也の新作『川の底からこんにちは』も観ましたが、いつもの石井節が炸裂してはいるものの(『ガール・スパークス』と比較すると面白いかもしれない)、どうも横浜聡子が『ウルトラミラクルラブストーリー』に陥った隘路に嵌っていっているような気がする。いや、また気が変わるかもしれないけど。

さて、告知です。もうご存じの方もいらっしゃると思いますが、来月(6月)14日(月)に、渋谷のUPLINK FACTORYで映像作家の佐々木友輔氏、そして、『ユリイカ』5月号(絶賛発売中)でもご一緒したSF/文芸評論家の藤田直哉氏とトークイベントを行います。佐々木さんの最新長編映画『夢ばかり、眠りはない』の上映後に、三人でアフタートークをする形式です。

詳細はこちら。

■イントロダクション:
ある女性映像作家が残した日記とビデオテープ。そこには、2008年に起きた秋葉原無差別連続殺傷事件によって壊れていくひとりの人間の姿があった。「昨日、君の夢を見たよ――。」彼女は眼前の風景に、容疑者Kが見ていたかもしれない景色、そして親友のKと共に見た景色を重ね合わせながら、茫漠とした郊外を彷徨い歩く。現実と虚構が入り交じった、夢のように儚い風景映画。事件から2年の時を経てついに公開。

トークイベント情報:
トークイベント「映像の身体、郊外の映画」(21:00〜)
佐々木友輔(「夢ばかり、眠りはない」監督)×藤田直哉(SF・文芸評論家)×渡邉大輔(映画研究者)
上映終了後は、郊外や地方の問題や、そこから生まれる「セカイ系」的な想像力を持った作家を論じている藤田直哉氏、そして、疑似ドキュメンタリー映画などの考察から現代の新しい映像表現やリアリティについて論じている渡邉大輔氏をゲストに迎え、本作が提起する問題についてより深く議論します。

■コメント:
僕がこの作品に凄いと思う一点は、見事な視点の感覚と膨大な彷徨で「場所」を映し続け、その「無意味さ」、あるいは「この空虚で荒廃した世界で幽霊のように彷徨っている自分」の孤独と恐怖を徹底して体験させ、そしてそれが酒鬼薔薇事件や加藤事件のような暴発に至る心境にまで追い詰めていく、その映像の説得力である。(藤田直哉 SF・文芸評論家)

■作者紹介:
佐々木友輔(ささきゆうすけ)
1985年神戸生まれの映像作家。高校時代に、携帯電話のメール送受信を撮り続けた映画「手紙」でイメージフォーラムフェスティバル2003の一般公募部門大賞を受賞。その後は映像表現を中心に、アートプロジェクトや舞台芸術など様々な領域を横断して活動している。主な上映・展示に、バンクーバー国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、ロンドン映画祭、平山郁夫賞 受賞顕彰展 「デジャメーヴユ 既/未視感」など。現在、東京芸術大学大学院 博士後期課程(先端芸術表現専攻)に在籍中。ウェブサイト→http://qspds996.exblog.jp/

■作品情報
□タイトル:夢ばかり、眠りはない
□基本情報:
メディア:DV/上映時間:113分/制作年:2010年
□キャスト・スタッフ:
制作:佐々木友輔/日記と撮影:佐々木累/朗読:小林千花/音楽:田中文久/撮影協力:石塚つばさ、豊永純子/主題歌:Swallow Heads「火の禽」/画像提供:門眞妙「だけど、忘れられる」/ウェブサイトデザイン:伊福紗代/フライヤーデザイン:石塚つばさ

■上映情報
□メインタイトル:「夢ばかり、眠りはない」上映+トークイベント
□開催日:2010年6月14日(月)
□時間:開場18:30、開演19:00(トーク21:00〜)
□料金:当日1500円、予約1300円(ドリンク代込み)
□場所:UPLINK FACTORYhttp://www.uplink.co.jp/factory/
□予約:
このイベントへの参加予約をご希望の方は、(1)お名前(2)人数(3)住所(4)電話番号
以上の要項を明記の上、件名を「予約/『夢ばかり、眠りはない』上映会」として、qspds996@gmail.comまでメールでお申し込み下さい。

ちなみに、予告編はこちらです。↓

今回、お話をいただいた佐々木友輔さんと、僕は3月に初めてお会いしたのですが、プロフィールをご覧になればお分かりのように、高校時代、史上最年少でイメージフォーラムフェスティバル大賞を受賞、すでに海外の著名映画祭での上映歴もある、気鋭の若手映像作家です。のみならず、現代のアクチュアルな批評的動向にも鋭敏な関心を向ける、非常に知的な作家でもあります。
今回上映される『夢ばかり、眠りはない』も、一見して、ジョナス・メカスのようなささやかな抒情性に満ちた映像詩のようでありながら、きわめて巧緻に幾重にも批評的な接線が張り巡らされている複雑な大作です。そのプリズムのようなイメージとミザンセンの交錯に、さらに全編にわたって綴られる女性のモノローグ(語り)の圧倒的な現前性が物質的な強度を伴いながら、リズミカルに物語を断片化し、作品に反映された「事件」の記憶にズレを孕ませる。本作における佐々木さんの所作は、紛れもなく独特の作家性を示しています。僕の関心領域で言えば(笑)、「擬似ドキュメンタリー」としても非常に示唆的なフィルムです。
詳しくは当日のトークでもお二人と語りたいと思いますが、それまでにもいくつか関連企画を展開したいとは思っています。今回の上映会のためのウェブサイトもできるようですね。
というわけで、6/14、お時間のある方はぜひお越しください!

*1:とはいえ、ここ数年は僕は「文芸誌」にはまったく書いていないので、なんだか居心地悪く隅のほうにいるだけでしたが…。とはいえ、何年もそれなりに仕事をしていると、僕のようなほとんどコミュニカティヴではない人間でも見知った顔が多くなるものです(笑)。

*2:言いたくないけど、オリヴェイラの新作なども見逃している